善き人のためのソナタ / DAS LEBEN DER ANDEREN

金曜の夜の渋谷駅界隈の往来を歩くなんて、
とてもつもなく憂鬱な事なのだけれども、それでも行ったのは
この映画が渋谷シネマライズでしか上映されていないから。
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凄まじい「向こうの人々の生活」。

ベルリンの壁崩壊の5年前、まだ東西冷戦下だった1984年の東ベルリンが舞台。
シュタージの大尉は、西側諸国でも著名な劇作家と恋人である女優が"反体制"的である
証拠を掴むべく完全監視を命じられる。
しかしながら、盗聴機を通じ"向こう側"の彼らの行動を監視する内に…
意外な展開をするお話。


暗い。はじまりの印象は、とことん暗い。
ベルリンの空も、建物も道路も、登場人物達の服も、どれもこれも憂鬱になる程灰色。
自殺統計のエピソードでは、
そういえばメランコリー(Melancholie)ってドイツ語だったよな…なんて事を思い出す。

でも、イイ年して枯れない大臣だとか、恰幅の良い売春婦のおばちゃんだとか、
思想的にストイックなイメージが先に立つ赤い国の赤裸々な姿に触れてしまったり。
ホーネッカーの小咄には思わず乾いた笑い。

2007年が"今"という視点で観ると、
5年後にはドイツは東も西も無くなり、価値観はひっくり返るのがわかっているから、
主人公の行動が必ずしも最善では無かったのではないか?…という捉え方も可能だが、
それはそれ。なんともやりきれない。

ただそれでも、
女優さんが"Sie sind gut Mensch."と言い、
邦題にもなっている"Die Sonate Vom Guten Menschen"が最後に音楽ではない形で
韻を踏むように劇作家により提示されたのを観ると、
1984年が"今"だった主人公の行動は、彼が善人としてできた全てだったんだと
腑に落ちる。


東ドイツ=ドイツ民主共和国(DDR)なんて国が存在した事、東西冷戦があった事を
記憶している人が成人以上になりつつある今だからこそ登場した
ドイツ現代史を総括するような映画。
by snowy_goodthings | 2007-02-23 22:00 | 鑑賞記


日常瑣末事記録


by Yukiko I. N.

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