Fluffy and Brilliant

立派なパイプオルガンを備えたオーケストラホール:Fartein Valen と
多目的ホール:Zetlitz を有する、
フィヨルドの断崖絶壁をガラスで造形したような大きなコンサートホール。
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今夜の会場はZetlitzで、オールスタンディング。
最前列常連多国籍勢と平均身長が日本人よりも+10cm超あるノルウェー人との間にいたい
(視界確保できる程度に地元っ子に混ざって観たい)と思って、お昼過ぎ頃に会場へ。
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結果、自分は queuing list 33番目でした。
行列組とは別に先に入場する guest list の面々がいることを想定して、
2~3列目くらいの位置になるかな。

今日は月曜日だからか…開場前から待つ聴衆の数は少ない。
まぁ、昨秋並んだスコピエよりは多い。
ベルゲンで出会った地元っ子達は "スタヴァンゲルへは仕事があるから行けない" と言っていた。
  ベルゲンからスタヴァンゲルまでは飛行機なら35分で飛べる距離だが、
  料金手頃なバスやフェリーを使うと5時間前後かかる。
  恐るべし、フィヨルド。
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今日、queuing list を作ってくれていたのは、昨日ベルゲンからスタヴァンゲルまでのバスで
乗り合わせていた若い男性。
"私の名前、日本語なんだけれど読める?" と尋ねてみたら、一瞬戸惑った様子だったけれど、
正しく読んでくれた。握手して、ご挨拶。今日はお世話になります。
開場前、リスト順に整列する際にも正しく呼んでくれて、"間違いなく読めたよね?"
みたいな気の利いたことを言ってくれた。
  はにかんだようにお話する礼儀正しい J君。どうもありがとうごさいました。
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"17時になったら列を作る(=それまでは自由行動可)" ということなのだが、外は強い雨と風。
ホールの周りをぐるっと、ツアークルーのバスと建物の隙間を抜けたりしながら眺めてから、
会場には持ち込めないであろう一眼レフカメラを置きにホテルへいちど戻って、
身軽な恰好に着替えたら再びホールで籠城。


「ホール使い放題だから、退屈しないよ」
そうだね、うさちゃん。直線と曲線がたまらん素晴らしい建物だよ、此処。
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待ち時間に稽古ができるなんて、素晴らしい会場だよ、此処。
そう、稽古。オレができる稽古といったら、杖道の稽古しかない。 σ(^_^;
Main Bar 上階のラウンジスペースが良い感じに滑る木の床だったもんで、
誰もいないのを良いことに一人稽古していた。
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得物がないから、エア動作だけれどさ。
全日本の指定技と、ちょっとだけ古流の中段。真半身の姿勢が雑になっていて、焦った。
自分で自分にダメだししつつ、小1時間だけでしたが。本気を出して、
靴を脱いで裸足でやりたいくらいだった。
  いまさら思うんだが、此処には防犯・監視カメラとか無かったのかな…
  これは、かなり奇妙な光景であったとは思う。もしセキュリティに見られていたなら、
  恥ずかしい。もとい、得物があったら演武してお見せしたかったわ。← 図太い

そして、なぁーんと!
日本から遠く離れたこの地で、モリッ知り合いのYさんと久しぶりに再会。
ベルゲン公演にもいらしたとか。ロストバゲージに遭い、いまだ
捜索中という非常事態だそうですが、なんのその、中欧を旅しつつ
ベルリン→イスラエルまでモリッシーを追いかけるんだって。
素敵だ。なんて素晴らしい旅。 (^o^)


*


お喋りする相手が増えると、待ち時間を短く感じるのは何故だろう。
漏れ聴こえてくるリハーサルの音にキャーキャー言ったり、
マーチャンダイズで旅の着替えを調達したりしていたら、あっという間に17時。
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ホールスタッフの指示の下、queuing list に従って整列してチケットのチェックイン。
現地通貨でオンライン決済ができなかったフランスの知人のチケットを
日本の私が代わりに買ったり、
当初コンサートをご一緒する予定だった人が"やっぱり行けない"
(そんな…その"やっぱり"とはどういう意味ですか…)と渡航キャンセルしたのを受けて
自分で自分のチケットを買い直したりしたため、同一IDで購入履歴が複数あった事がいけなかった
らしい。バーコードリーダーにエラーを宣告されて焦った。
拙い英語で事情を説明したら、あっさり通してくれたので、大事に至らず。
  日本を発つ前、オットに言われた。
  "「モリッシーを観たい」 とは誰にでも言える。
  それを自分の行動で実現できるヒトを同行者に選びなさい。でなきゃ、1人で行くべき。"
  …という趣旨の事を。
  日本で留守居する我が配偶者は、旅して追いかける私よりもモリッシーに近付いた発言をする。
  凹むさ。

セキュリティチェックはバッグを持った人だけに声をかけていくというやり方。
真っ先に私が引っ掛かり、バッグの蓋を全部開けて中身をすべてチェックされたのだが、
ヌイグルミ連れ日本人にノルウェー人は優しかった。 σ(^_^;
これがムンバイだったら、うさこの内臓に爆弾を仕掛けていないか、ムギュムギュされたであろう…
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だだだだっと、駆け足で入場。マイクロフォンスタンドの真正面、3列目辺り。
何故か始まって早々に1~2列目の常連さん達が自分の正面左右に直列したもんだから、
真ん前のステージをまるっと眺められた。このくらいの間合が緊張し過ぎなくて、
自分には調度良いかも…と思ったんだけれど、そんな事はなかった。
だって、相手はモリッシー先生である。

私の右隣には、ノルウェー若人の男女が3~4人。
ショーが始まる前から、ビールをがっぱがっぱ、よく呑んでいた。うひゃー…さ、酒臭い。
そして、私の左隣には、おそらくスペインから来たと思われる母と子。母子だと思う、たぶん。
お母さんは私と同世代だろうか…いや、年上にも見える。息子くんは12~13歳くらいかな。
もっと左の向こう、誰かの頭上にそよぐ青いバラも見えた。
前からは英語、右からはさっぱり解らないノルウェー語、
左からはわずかに解るスペイン語が聞こえてくる。今宵も多国籍な聴衆。


今宵も始まりました。
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“Stavanger. How are you? That’s good... Wow.” 
  右隣の地元っ子達がオレの耳元で狂喜の歓声をあげちゃっていたもんで、
  ヒアリング自信ない、最初の挨拶はたぶんこう…
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わぁ、近い… Suedehead、今日はこの1曲目から脳天を撃ち抜かれた気分。
"Why do you come here? When you know it makes things hard for me?" が
マイクロフォンが拾って左右のスピーカーから発せられた歌声と、
マイクロフォンの向こう正面モリッシー本人から発せられる歌声と一緒に聴こえてきたから。
今夜はずっと、そんな不思議なサラウンドがところどころ聴こえた。すごい、すごい、すごい。

言霊…あるいは、רוח הקודש 。←自分で書いておいて、読めない

母国語が違う面々が、揃って同じ言葉で莫迦みたいにでっかい声を張り上げて大合唱するという、
不思議な光景。オレは音痴だから歌えないんで、ただ眺めているばっかり。
聴き惚れちゃうほうだし…って、そんなこともないか。オレも歌っていたような気がする。

語弊があるかもしれないけれど、今夜の雰囲気は和やか。
"うぉーっ" とか "ぎゃーっ" という殺人的な熱狂のラッシュとは違う。居心地が良いくらいに
柔らかい情緒が漂う。
モリッシーが聴衆へ話しかけるのに対し、
ステージまで届いたか判らないが、後ろの方から一生懸命に返事をする声が聞こえた。まるで、
対話するに進んでいく…と感じたのだけれど、それって自分の希望的な印象形成かもしれない。


私は、今夜について「良いショーでした」と意地でも振り返りたいのです。
というよりも、
これまで自分が居合わせる事ができたすべての機会について「良くなかった」と言うつもりは
ないのです。
勿論、
ショーの印象はいつもさまざまに異なるけれど、自分にとっては個人的な思い入れと思い出に
まみれたブカレスト公演が生涯「特別」であり続けるだろうとかあるけれど、
だからって「どちらのショーが良いor悪い」とか「どのショーが最高だった」とはならない。
  そういう言説は、ジャーナリスト・ライター・音楽評論家・研究者と呼ばれる方々のお仕事です。
  そして、ファンと呼ばれる人達の特権です。どうぞ。
  あるいは…そうだ、モリッシー先生ご本人が総括するならば、それは受け入れられる。

自分の五感において、巡り合わせたすべての機会がそれぞれ、
たった一度の大切な瞬間であるのです。

自分の視覚機能において、モリッシーはいつもフワフワでキラキラに見えるのです。

「誰かに似ている」という修辞をご本人は嫌がるかもしれないが、
誠実な真意があるんですと弁解しつつ書いてしまうと、Edith Piaf みたいだと思った。


57歳の男性に使うには不適切な表現であろうが、
誠実な真意があるんですと弁解しつつ書いてしまうと、まるで乙女のようだった。


…いつか殺される、自分。閑話休題。


World Peace Is None of Your Business のイントロの時、そのあと The Bullfighter Dies の前、
聴衆の誰かが "Morrissey for president!" と叫んだのに対し、
"Well...? Nobody would vote for me. not me..."と、先生がしゃらっと答えていたり、
とにかく、 Morrissey vs. Audiences の掛け合いが楽しい。

その最高潮は、Scandinavia を歌う前。

"I'd like to dedicate next song to five people who are the characters in my favorite norwegian film...
So, in my dedicate listing... Jannicke, Ingunn, Eirik, Mikael, and Morten Tobias...
Do you know?"
と、几帳面にジーンズのポケットからメモを取り出して、リストを読み上げていた。

知ってる?という問い掛けに対して、ステージ間際の反応はいまいち鈍かったみたいで、
"Well... No problem." と切り上げて歌いだしてしまったけれど、
私の右隣の地元っ子達はリストの途中で解っていて、大喜びで "YES!" と叫んでいた。
List of Lost...


モリッシー先生 "お気に入り" ノルウェー映画とは、これだって。
Fritt vilt / Cold Prey
 
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日本に帰ったら、古今東西ホラー・オカルト映画好きなオットに知っているか尋ねよう。
きっと喜んで興味を示す。


ノルウェー映画といえば、一昨日のベルゲンで、
Alma Matters の前に "And hopefully... hopefully this will cure your insomnia."
と言うのを聞いて、この映画を思い出した。
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日本出国前、4日間(ちょっと足りない)徹夜して仕事を調整した
我が身にも沁みたさ。


"So, you get the idea? Thanks for listening."
  右隣の地元っ子達がオレの耳元で "Thank you, Morrissey!" と叫びまくっていたもんで、
  ヒアリング自信ない、締め括りの挨拶はたぶんこう…
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モリッシーを追いかけると、いろんな事を知るし、いろんな事に気付く。
モリッシーが歌う場所にいると、思考はいろんな方向に猛烈に働くし、いろんな感情が溢れだす。
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したっけ、自分の近くにシャツが飛んできたと思った次の瞬間に全部が吹っ飛んだ。
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目の前にどちらかの袖がふわっと降りてきたので、空いた左手で受け止めたら、
左右後方から猛烈な勢いで引っ張られて首が絞まるというか、頚部捻挫させられそうになったので、
体捌きしたのはぼんやりと覚えている。
  さっきの一人稽古が役に立った…かどうかは知らない。

すぐに右隣にいたノルウェー人達やらその他面々やらが身ごろを渾身の力で引き裂いて
離れていったのだけれど、私の周りにはまだ3~4人群がっている。
私は Irish Blood, English Heart を見届けたいんだけれど…と、思ったら、
皆さんシャツを掴んだまま
"I've been dreaming of a time when..." と、跳ねながら歌い出すから振り回される。
頼む、やめてーっ!

日本人のオレが何故、この歌で絶叫しているんだ?

この時、ずっと右手に持ったままだった我がカメラは、静止画設定になったり動画設定になったり
しながら、持ち主の意思とは無関係にいろいろ写して(映して)いた。
これってちょっとしたホラー・オカルト。

歌の終わり、"forever" の残響とともに別れの挨拶をするモリッシーが
とても綺麗に写っていました。
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先生に応じて右手を振り上げた時、シャッターを押していたらしい。

あぁ…前後不覚に陥ったまま、終わってしまいました。
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今まで、ちょっとだけ良い人間になるべく努力していたつもりなんだけれど、とんでもない。
自分は今なお、どうしようもない莫迦者であった。


"私、鋏を持っています!お願い、動くのやめて!"と叫んで、
(この日のブートレグには、5回くらい"ハサミ持ってる"と怒鳴る自分の声が入ってる)
Victorinox マルチツールの鋏だのナイフだのを使って2つに切り裂くところまではできたのだが、
このシャツ、何番手の糸で織っているんだろう…刃が刺さらない。
結局、セキュリティのお兄さんに切り分けて頂いたんだけれど、
"気にしないで、布用鋏でないと裁ちづらいわよ" と右がわの女性には励まされ、
左がわの男性には
"Japanese lady, thank you very much. Domo Arigato gozaiii... mashita!" と
日本語交じりでお礼を言われた。私はまったく役に立っていません。 σ(^_^;
  後から気付いたんだが、私の Victorinox は何故セキュリティチェックで
  引っ掛からなかったのだ?
  自分でも、この瞬間まで所持している事を忘れていたくらいなんだけれど…
  今さら、ぞっとしている。

日本語使いの男性 M君とは、ひと段落したところで再び会えたので、ご挨拶。
私の名前について伝わらなかったので "Snow の…" と言ったら
"Yuki(雪が降る仕草をしつつ)ko" と、意味まで解った様子。
君のその日本語リテラシーは何故?

自分が彼の事をちゃんと覚えていたら、またいつか、もしかしたら緑の国の何処かで
会える気がする。だってさ、
次の瞬間には、スコピエで会ったセルビア人の彼が、満面の笑みで私に手を振っているのが
視界に入ってきたんだもん。
"また会ったね!今日ね、モリッシーが握手してくれたんだ。"って大きな声で話してくれたのだが、
それってすごい既視感がある。じゃあ、また今夜も "Congrats!" と叫んで彼に拍手を捧げよう。


モリッシーを追いかけると遭遇する、インターネットの彼方此方にある、
"Group" とか "Society" とか "村" といった場には、自分はもう所属とかしたくはないし、
其処で発生する、際限なく節操なく等質性を伴う "仲間" 意識を要求される現象には
もう耐えられない。
自分が考える・感じるように相手も考える・感じるなんて、そんな"期待"はやめなされ。
  何があったか書くつもりはないが…ベルゲン公演の前には、
  ちょっとした悶着が何度かあって、疲れた。
しかし、
リアルな世界で遭遇する人々は皆さんチャーミングである。
電脳空間で取っ付きにくかった人々も、生身の姿に会えれば、初対面でも親しい気持ちになれる。
勿論、そうでない人もいますが、そういう時には同意・非同意ひっくるめて、
お互いの存在を認め合えば良いだけの事。お互いにとって、調度良い間合いを取れば、それで終了。


それよりもなによりも、今。
目の前で起こる、様々な事についていくのが大変。
もう…撃沈。がむしゃらに恥ずかしいほど、酷くみっともない事をした気がするけれど、
悔いはないです。

私は、自分自身の身体を以て "Morrissey" を体験したくって此処に来ているんです。
ただ、それだけの事。
そして、それを自分にできるやり方で実行したんだから。そう思う。そう思おう。


*


クロークでYさんを探して合流。
「旅は道連れ」という言葉は、こういう場において使うべき。
シャツをびりびりっと破ってお裾分けして、お隣同士のホテルまで一緒に帰った。楽しかった。
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Intro: The Operation
1. Suedehead
2. Alma Matters
3. You Have Killed Me
4. Ganglord
5. Speedway
6. I'm Throwing My Arms Around Paris
7. World Peace Is None of Your Business
8. Kiss Me A Lot
9. Istanbul
10. Meat Is Murder
11. It's Hard To Walk Tall When You're Small *early version?
12. Everyday Is Like Sunday
13. The Bullfighter Dies
14. Scandinavia
15. All You Need Is Me
16. The World Is Full Of Crashing Bores
17. Jack The Ripper
18. I Will See You In Far Off Places
19. What She Said
20. Oboe Concerto
Enc 1. Let Me Kiss You
Enc 2. Irish Blood, English Heart
Outro: Death

    撮り散らかした写真は Flickr (←Click) にストレージしてある。
    我が妄想は酷い、酷すぎる。でも私の目には、モリッシーさんはこう見える。
    見る・見ないはご随意にどうぞ。
    私は写真撮影のプロではないが、素人平均よりも巧い事は自覚している。
    醜い写真は無いつもり。


*


明日になったら、這い上がろう。
やっぱり、もうちょっとだけ良い人間になりたいと思うのです。本当ですってば。

で、その明日という日。
自分は、"Cold Prey" もどきな恐ろしい体験をするのであります。
ツルハシでめった刺されたわけではないけれど。それについては、また改めて。




by snowy_goodthings | 2016-08-08 22:00 | 鑑賞記


日常瑣末事記録


by Yukiko I. N.

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