The Opening Night, The First Night

会場へ来る前、
現時点で最新作 'World Peace Is None of Your Business' が11月にリイッシューされるって
電子の噂を知った。

そのジャケットとなる 'La Passion de Jeanne d'Arc' が今、目の前に大写しにされている。おぉ…
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マーチャンダイズにも、
"Now I Know How Morrissey Felt" って、ジャンヌ・ダルク意匠のTシャツが吊るされていた。
あれ欲しい。
(もっと欲しいのはツアークルーの "BE KIND TO MORRISSY OR I'LL KILL YOU" Tシャツ)
モリッシー先生は、フランスとイギリスとが116年間争った戦争で
灰になって散った乙女に何を託すんだろ?
いつも自分の認識はすごく遅れて追いつくのがやっと。だから、今の自分にはさっぱり解らない。
いつか解るのかな…今はちょっと自信がない。


ほぼ定刻通りに始まった約30分間のプレショービデオの後、幕が上がりました。
今夜、スクリーンは振り落とされなかった。文字通り、
幕が上がった。
単純にステージ仕様上の演出変更なんだろうけれど、それだけで感激してしまう
我が感受性の単純さ。
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The Operation の変態的叩きまくりドラムのイントロは、じらし気味に少し長め。
素晴らしい音響のホールいっぱい、
男の子達の Morrissey, Morrissey, Morrissey... の歌、女の子達の悲鳴、
いろんな人達の拍手が響く。
すごい。穏やかな印象だったこの街で、こんな一途に必死な熱狂が起こるんだ。
昨日バスで乗り合わせたスウェーデン人ご夫婦とか、
白杖をついてタクシーから降りてきたお兄さんとか、その彼を入口までフォローして
セキュリティに"席まで案内してあげて"とお願いしていたカップルとか、
パパと一緒にやってきた小学生くらいの男の子とか、
お昼頃からステージドア前にずっと立っていた大学生くらいの女の子とか、
えぇっと…他にも街でみかけたいろんな方々、皆さん揃ってこの空間の何処かにいる筈。
ついでに、この土地において、明らかに"外国人"な自分もいる。
ちょっとした「世界」のサンプル抽出。


始まると信じていた通り、始まりました。
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"Hello! I am I, YOU are YOU. Hello Bergen."

その第一声が、今の自分には、すとんと腑に落ちる。たったそれだけの事で、
Morrissey になにもかも見透かされている…と、そんな危うい錯覚に陥りそうになる。なんなんだ。
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ラスベガス新春歌謡ショーからおよそ7ヶ月ぶりに生身の姿を見たモリッシーについて、
少しだけ雰囲気が変わったように感じるのは、何故だろう。ほんの少しだけ。
初戦、もとい、初日だからかな。腹まわりがちょっと太くなったからかな。
だからって、老けたようには見えない。
曲間のお喋りが、少し時間をかけて聴衆に目線を合わせて言葉を選んでいるよう聞こえたからかな。
  この公演の数日後から
  インターネット上でさんざん喧伝される「病状」については、この時、自分の知覚では
  何も感じなかった。秘中あたりに貼られた鎮痛だか傷の手当てだかの絆創膏は見えたけれど、
  バンドエイド姿は今に始まった事じゃないし…
  正確には、自分は感じないようにしていたのかも。ともかく、とやかく自分は考えられない。
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"Did you know that we've been tried for 15 years to come to Bergen?
But that's... there's always been a fly in the ointment.
Well, can I just say...for all this time. Thanks for giving me sold-out night... Very grateful."

15年間の因縁がどんなものかは知らない…が、2016年の今夜、
モリッシーはベルゲンで歌っている。

完売満席の会場を埋めつくしているのはノルウェー人だけではないのだけれど、
それは世界中の人がモリッシーが歌うのを待っていた結果だから。
これから、此処から始まるツアーどの会場でも、
モリッシーを追いかけて旅する多国籍な聴衆と、モリッシーを地元で待つ聴衆とが入り乱れて、
モリッシーを歓迎する光景が繰り広げられるでしょうから。

かく書く自分だって、およそ2ヶ月後には、我が在所である横浜へ25年ぶりに来るモリッシーを
世界中から・日本中から押し寄せる方々に囲まれて観る・聴く予定である。
恐ろしい半分・楽しみ半分、その日を待つのみ。

歌われた歌は、最近の曲、懐かしい曲、知らない曲、いろいろ。
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軽々と Have-A-Go Merchant で突き放されたと思ったら、
I'm Throwing My Arms Around Paris で絡まれた。まるで猫みたい。

 In the absence of your love and me

2つに折ったマイクコードが自分達の頭上をかすめていったのを、すぐ後ろのおじさんが
掴み取ったものだから、周りの2~3人がワラワラと群がって綱引き大会となるが、
セキュリティがささっと寄ってきて、制止された。
ごめんなさい。(^_^;
しかし、対戦相手のおじさんはケロッとしていた。敵わない。

モリッシーご本人によるご当地公用語挨拶はなくなったけれど、
Meat Is Murder のご当地公用語による問い掛けは2016年も変わらず。
流れる映像は厳しさを増し、その場しのぎの共感だったら振り払われるであろう勢いである。
もうとっくに、肉や魚や卵や乳製品を、
ファストフードチェーンで売られる動物の遺体を「食べなければ良い」とか、
食志向だけの話ではなくなっている。ヒトの世界はどう出来上がっているのか。ヒトはどう在るべきなのか。
モリッシーの主張・視座について、過去どうだったかを問うても無駄。
突き抜けていくばかりだから。
今、どうなのか。今、どう生きているのか。
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日本時間で Hiroshima Day 翌日に聴くのはちょっと堪えた、Everyday Is Like Sunday 。
そして明後日、日本時間で Nagasaki Day である時間帯に
スタヴァンゲルで再び聴くであろう事を既に覚悟している。
申し訳ない。しかしながら、この事は私自身の感受性の問題であり、
モリッシーのせいではない。
日本人であっても、他人はこの歌についてたいてい全く違う感じ方をするでしょう。
それはもう、人それぞれだから。

前置き無くさらっと始まったけれど、声が怖いくらいな迫力だった Scandinavia。
最後、暗転する瞬間の"突き"の所作に驚いた自分は、鍛錬が足りていない。
構えるモーションは見えたから、判ったのに。ひどく悔しい。
歌の世界に呑まれたんだ。すごい悔しい。
今、思い出しても震える勢いで悔しい。あーっ!!!
この歌について、そんな反応する人間ってあの場において他にはいないでしょう。
だからもう、人それぞれだから。

人それぞれ…そういうものでしょう?

で、わぁっと歓声があがった後の All You Need Is Me で思った。
モリッシーを好きな人も、モリッシーを嫌いな人も、
モリッシーがいなくなったら寂しかろう。
ねぇ、a small fat child at cancer house...
あぁもう、良くできた展開に文句無しに引き摺り回されている。
したっけ、Jack The Ripper で降参。
だって、最後さ…いや、もうダメだ。
もうこれ以上は言葉を尽くしたって、全然足りない。


好きな曲、苦手な曲、いろいろあるんだけれど、今夜は全部が愛おしい。
ほうら、頭がおかしくなっている
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アンコールは、Let Me Kiss You でシャツを投げた後、
ジャケットを羽織って戻ってきて Irish Blood, English Heart 。
上手隅からステージ・インべーションを試みたものの
セキュリティに羽交い絞められて下されていくお兄さんに向けて
"my friend" と何度も呼びかけていた光景が、とても優しい。
苛烈な歌詞と裏腹…違う、ちゃんと符号している。
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その Irish Blood, English Heart を歌い上げた去り際、
最後から2番目くらいに握手して頂いた。いよいよショーが終わってしまう時に。
お互い相手の目を見て、お互い等分の力で手を握り合う。
そんな当たり前の挨拶をするだけなのに、緊張と高揚でしっちゃかめっちゃか。
それでも、昨秋のブカレストに比べたら、うんと普通にご挨拶できたかな…どうだろう。
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Mr. Morrissey、どうか私の事なんざ忘れてください。そんな心配は…無用だろう。

あの人を畏れて敬えよ。それと感謝を。←くれぐれも宗教的狂信ではない
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Let Me Kiss You で始まり、Irish Blood, English Heart の間ずっと続いていたシャツファイト。
仕立てが良い新しいシャツは、簡単には裂けない様子。
終了後、準備が良いセキュリティのお姉さんが、皆さんの取り分を
手際良く切り分けていっていた。
お見事。
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ところで、
私はプレスでもプロでもないのに、何故に↓こういう写真を撮る機会があるんだろう?
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ぜんぜん国籍が違うおふたり、'Meat Is Murder' Tシャツおそろい

皆さん何の抵抗もなく、いち聴衆でしかない私に撮られるのは何故だ?
"シャツを分けてくれた僕の new friend と撮って" と、お願いされて撮ったのだけれど…
そりゃ、良いスナップだと我ながら思う。
ねぇ、君達。私にこの写真をどうしろと言うのだ?
いつか画像検索でこれを見つけたら、記念写真として持っていってください。よしなに。

なかなか会場を去り難くって、
一緒に柵前に貼りついていたブカレスト以来の知人さんと、
セキュリティのチーフっぽいおじさんとお喋り。
何処から来たのと尋ねられたので、"フランスから" & "日本から"と答えたら、
すぐ近くにいたノルウェー人のお兄さんに
"まさか、モリッシーを観るために日本から来たの?"と、
Suedehead を歌って、称えられた。褒めてないか、呆れていたのか。
I'm so sorry. I'm so sorry...


*


今は、頭ん中がぱんぱん。独りでいたかったから、
フランス人・イタリア人からのありがたいお食事のお誘いは断り、ベルゲン港までぷらぷら。

途中で通りかかったバーでアフターショー・パーティをしていて、若人達が
(そうでない人達もいたけれど)There Is A Light That Never Goes Out を大合唱していた。
楽しそう。
  この後、スタヴァンゲル、ヘルシンキでもずっと感じたのだが、
  北欧では20歳前後くらいの若い地元っ子ファンがかなり目立った。
彼ら・彼女らにとって The Smiths は「懐かしむ」って文脈ではなく、
今夜すぐ何処かに連れて行ってくれる存在なのかしら。
そうしたら、Morrissey は彼ら・彼女らを導く"光"かしら?あるいは"同乗者"かしら?
彼ら・彼女らには、私とは違う姿が見えていると思うが、私にはわからない。
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私は私で、今夜も幸せでした。今、この瞬間がすべて。
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Intro: The Operation
1. Suedehead
2. Alma Matters
3. You Have Killed Me
4. Ganglord
5. Speedway
6. Staircase At The University
7. Have-A-Go Merchant
8. I'm Throwing My Arms Around Paris
9. World Peace Is None Of Your Business
10. Kiss Me A Lot
11. Istanbul
12. Meat Is Murder
13. It's Hard To Walk Tall When You're Small *i did not know this version
14. Everyday Is Like Sunday
15. The Bullfighter Dies
16. Scandinavia
17. All You Need Is Me
18. The World Is Full Of Crashing Bores
19. Jack The Ripper
20. I Will See You In Far Off Places
21. Oboe Concerto
Enc 1. Let Me Kiss You
Enc 2. Irish Blood, English Heart
Outro: Death

    撮り散らかした写真は Flickr (←Click) にストレージしてある。
    ステージ柵前で、観る・聴く・マイクコードで綱引きするといった事に夢中だったので、
    枚数はない。
    見る・見ないはご随意にどうぞ。
    私は写真撮影のプロではないが、素人平均よりも巧い事は自覚している。
    醜い写真は無いつもり。


*


日本に帰ってきてから、この公演のブートレグ音源を家で流していたら、
傍らにいた夫に
「モリッシーはどうしちゃったの?声の迫力が、今まで聴いた中で
(スタジオ録音・ライブ録音・ブートレグ etc.)いちばん凄い」と言われた。

なんとか説明したいのだけれど、私は答えを持ち合わせていない。
どうしちゃったんだろうね。



by snowy_goodthings | 2016-08-06 22:15 | 鑑賞記


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by Yukiko I. N.

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