It' a so simple desire.

アメリカなんか行くもんかと思っていたのに、来てしまいました。しかも、
ラスべガスなんて(おそらく)超"アメリカらしい"土地に。
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だって、Morrissey が今夜、此処
Hard Rock Hotel and Casino、The Joint で歌うから。
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明日以降は、ツアーのスケジュールがまったく発表になっていないし、
暫しお休みされるのかもしれないと思ったから。

自分が初めてこのヒトを生身の姿で見たのは、2012年4月。
その前年から今日まで、ときどき延期や中止はあったけれど、長期日程・長距離移動を伴うツアーをずーっと
何度も繰り返していたし、何処かへ旅して行けば、おじさんが歌っている姿を
観る・聴くことがいつだってできるんだと思い込んでいた。違うよ、そんなわけはない。

日本において年末年始は休日だし、
日本からアメリカへは太平洋を越えただけの場所だし、ラスベガスの気温は東京・横浜とあまり変わらないし、
今まで行った何処よりも簡単に行ける…筈じゃないか。
また「会いたい」と本気で願っているんだったら、ツンデレ態度保留な御託を並べていないで、行くんだよ。
後から「行きたかった」とか言ったって、自分への慰めにすらならないんだから、行くんだよ。
だから来たよ。


*


カジノに飾られたジャケットは、2014年7月にアルバム
'World Peace Is None Of Your Business' が発売された時の
NME表紙で着ていたジャケットらしい…のだが、猫と戯れ合ったんですかと
訊きたくなるくらい、あちこちボロボロしている。
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The Joint のセキュリティは厳しくて、
カジノから繋がった屋内の入り口は6時からじゃないと並べないという。
ステージ前 General Admission チケットを持った皆さんは、
屋外に並んでいた。10月にスコピエで会ったヒト達もいたし、
中南米からやって来た(南米ツアーの映像で見た顔が何人か)えらい陽気なヒト達もいた。
目の前にいたチカーノのお兄さんのお手製モリッシー・ドカジャンが素敵ねとか、ちょろっとお喋り。
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北米出身者・在住者のほうが少ないかも。
まぁ、ヒスパニックが多い土地柄だもんで区別はわからない。
自分は、それよりもっと少ない日本人であるんだけれど、
今日はお仲間のるーぴーさんがいるから、1人ぼっちじゃないのだ。
(^▽^) 
  道中、過去の来日公演に行ったお話を伺った。御大がキレッキレな頃。
  今もずっと大事にされている思い出は、キラッキラで美しい。たぶん、
  2012年の来日公演しか知らない自分とは違う風景が見えるんだと思う。


屋外に並んでいる事について、
セキュリティと揉めた瞬間があったみたいだけれど、モリシィファンは強かった。
昨日朝から並んでいた誰かを先頭に順番に入場。
バッグを開いた手荷物検査が3回、
金属探知機で撫で回されるボディチェックが1回。
この神経質さは、アメリカという土地柄か、年末年始という時節柄か、
何度目かのテロとの戦いに直面しているという局面だからか。
でも、
ムンバイを旅した時に体験したセキュリティチェックに比べたら、甘い。
ブカレストの国民の館で受けたセキュリティチェックに比べたら、緩い。大丈夫か。
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幕が振り落とされる瞬間までは、いろんな物が見えてくるのだけれど、
始まったら全部が吹っ飛んでいく。えぇ、もう解っている。いつもの通りだ。

見るべきものは、ただひとつ。
目の前にいるあのヒト、Morrissey。
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"Happy New You!"

自分もなんだけれどさ、皆さんスマートフォンをモリッシーに向けて
掲げていて、後ろから見ると教会のご祈祷の灯りみたい。でも、この光景は
宗教の熱狂に似ているけれど、もっと、恥ずかしいくらいに真正直で
みっともないほど必死。
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あっという間に五感をかっさらわれて、ボーッとなっちゃっている。
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この公演の前の前、
サンフランシスコ公演の写真や動画を見て、自然光に近い色合いの
ライティングで先生の表情が良く見える照明を増やしたのかしら、とか
思っていたのだけれど、もしかしたら逆も然りだろうか。
ステージからも、ちょっとは良く聴衆の様子が遠くまで見えているのだろうか。
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歌うその姿が、素晴らしく素敵だ。
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ラスベガスでぜったい聴けると思ったけれど、歌われるとやはり切ない
'You'll Be Gone' 。
でも、途中からサイン会とプレゼント贈呈会になるという展開。不思議だ。
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したっけ、あのプレゼントされたぬいぐるみは、ワンワン(犬)だと思っていたら、
ニャンニャン(猫)だったらしい。そりゃ、モリッシーには猫なんだけれど。
メキシコ人のヌイグルミ造形センスは、不思議だ。
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自分の前方、中南米から来たヒトが沢山いたみたいで、
だんだん、アメリカではなくてメキシコ辺りにいるような気分になっていく。
行きたかった土地だから、この錯覚は嬉しいんだけれど、不思議だ。
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だから、'Meat Is Murder' 映像の締め括りがスペイン語でも驚かない。
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自分の凄まじく拙いラテン系言語知識を以ってしても、読めるよ。というより、2015年に何度も投げかけられた言葉。
"What's your excuse now? Meat Is Murder"

'Jack The Ripper' と 'All The Lazy Dykes' を生で聴いたのは、自分は初めて。
どちらも知らない歌ではないのに、目の前で歌っているのを見ていたら、
「自分」を定義する殻をカチ割られて、内側を引っ掻き回されている気分になっていく。
で、引っ掻き回されていった後は、なーんもかも失くなっている。
自分の内なる世界に絶対あるべきものって、そんなには無いのかも。
あるいは、まだそんなのは持っていないのかも。
自分で探しに行けっていうことか。なんなんでしょうね。不思議だ。

いや、わかっている。
この感覚がたまらないから、此処に来ているのです。


'Let Me Kiss You' でしっとりしたと思ったら、
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'The Queen Is Dead' でドッカーンと爆発した。
女王陛下の前で、希望と純潔と血の犠牲のメキシコ国旗が翻る。
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お喋りは、Kirk Douglas が今年100歳とか、
政治・社会的時事、動物の権利擁護の事、音楽業界の事、自身のツアーの事、など。
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以前に見聞きしたお話もあるんだけれど、
言葉の端々に感じる棘が以前よりも深く刺さってくるのは
今日という日だからでしょうか。
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最後のご挨拶は、いつも通り「さようなら」なんだけれど、
"And of course, the trouble with hello is goodbye."

…それって、 Sérgio Mendes?
  we'd have no more songs to sing とか、
  いや、そういう修辞だったら勘弁して。
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その一言でお行儀良くしていられなくなったのか、此処じゃあ
アンコールではそうするのが流儀なのか、後ろからヒトが押し寄せてきて、
皆さん一緒にステージ近くへと雪崩れこんでいく。
'Suedehead' 、最初の詞がこの状況と符合しているような。

あぁーれぇーっ

ステージ上のおじさんは、なまら楽しそうに歌っている。
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モリッシーが歌っている姿を見る事が自分のなけなしの欲望だから、
それが今夜も叶って嬉しいです。

いつも通りにシャツを投げて、落ちた先で争奪戦が始まったのを、
ふふっと笑顔で見下ろしているのを見たような気がする。それって、会心の笑みですか。
乱闘の外周に引っ張られて面食らっていた瞬間だったから、印象について自信はない。


"Vaya con Dios."
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終わってしまう。終わってしまいました。
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1 Speedway
2 Alma Matters
3 Staircase At The University
4 Action Is My Middle Name
5 Kiss Me A Lot
6 World Peace Is None Of Your Business
7 Mama Lay Softly On The Riverbed
8 Ganglord
9 You'll Be Gone
10 Reader Meet Author
11 Everyday Is Like Sunday
12 Oboe Concerto
13 Jack The Ripper
14 The Bullfighter Dies
15 The World Is Full Of Crashing Bores
16 All The Lazy Dykes
17 I Will See You In Far-Off Places
18 What She Said
19 Meat Is Murder
20 You Have Killed Me
21 Let Me Kiss You
22 The Queen Is Dead
enc: Suedehead

シャツファイトは、激しかった。ただ、脇から眺めているだけ。
先生がお召しのシャツは、とても仕立てが良いから、
人力ではなかなか裂けないと思われるのだが、どうなったんだろう…
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'World Peace Is None Of Your Business' を提げたツアーは
今夜でひと区切りになるみたい。
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初めて聴いた時には遠い場所からの警鐘のように感じていた
'World Peace Is None Of Your Business' という歌は、
何度か日本を出て旅して行った先で聴くたびに、印象が変わっていった。
「危ない」と言われる国・地域を、迂回したり、通過したり、
わざわざ訪ねて行ったりしたし。日本も変わりつつあるし。

現時点で"最新作"について、その印象はまだ変わっていくと思う。
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そんな世界情勢の真っ只中にいるけれど、
また、Morrissey を理由に旅に出たいのです。
あのおじさんが歌っている姿を見たいだけです。その場に居合わせる事を許してほしい。
そんな単純な欲望に従って、旅慣れない自分がこの1年間に
世界一周ぶん以上の距離を移動した莫迦みたいな衝動に、ちょっとぞっとする。
でも、斜に構えて賢いふりしたって、何にも起こらない。
「モリッシーが歌うのを見たい」がためだけに、まっしぐらに突っ込んでいったのは
愚かだったけれど、何か"在った"実感がある。
動いたぶんだけ、知らなかった事を知ったり、知らなくて良い事を知ったり。

次の機会がいつになるかわからないけれど、
その時が来るのをもう待っている。その時が来たら、行く。行っても良いでしょう?


Viva Las Vegas. Muchas gracias, Sr. Morrissey.


by snowy_goodthings | 2016-01-02 23:30 | 鑑賞記


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by Yukiko I. N.

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