皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇 / NARCO CULTURA

夕方の所用前に、ちょい映画鑑賞。
"ちょい"と行ける場所に尖がった映画館がある幸せ。ありがたや。


邦題を見た時、「10年間でおよそ10万人」の死者がいるという
メキシコのドラッグ戦争について、
麻薬カルテルの抗争を追ったドキュメンタリーかと思ったのだが、
いざ映画が始まったらぜんぜん違った。
そんな、一筆書きできるような単純な事はなかった。

まぁ、奥行きある解釈を阻むようなレッテル貼り邦題は
過去にも沢山あったから、いまさら気にしないけれど…でも、
鑑賞前の予想と鑑賞中の印象とのシフト・ショックがぐわんぐわん。
(>_<)
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麻薬組織のボスを「英雄」と讃え、抗争での殺し合いを「成功」と讃える
ナルコ・コリードの歌い手は国境の北、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。
メキシコに憧れ、ギャングに憧れ、マリファナを吸い、
「やめた」と言ってたのに…映画の中ではぜんぜん麻薬から足を洗っていない。

市民からは「何もしてくれない」と疎まれ、麻薬組織からは「殺す」と脅される
現場警察官は、国境の南、シウダー・フアレスで生まれ育った。
自分が子供の頃は平和な街だったと嘆き、同僚達の相次ぐ死を嘆き、
恋人と結婚したらすぐ向こう岸、平和なテキサス州エル・パソに移住しようと
考えているらしいが…映画が終わるまでは辞めようとしていない。
(彼に「明日」があったのかは不明)

そして彼らを巡る人々、生者と死者とが区別曖昧にわらわらと。
善良なヒトもいれば、凶悪なヒトもいる。


この喩えは極めて不謹慎だけれど、
ちょっと前に観た「マッドマックス」の虚構世界を
現実のものとして生きて死んでいるみたい。それを「格好良い」と熱狂しながら、
でも「暴力反対」とか「麻薬はNO」とか宣う人々。

死体は物言わないけれど無数に並ぶ市民墓地の墓標、
それとミニチュア豪邸のようなカルテルのボス達の霊廟は
雄弁に己の存在を物語っている。


で、遠い国で現実に起きている出来事は、
良くできたロマン・ノワールのように思えてしまう思考停止。


この喩えもぜんぜん無粋極まりないのだけれど、
ナルコ・コリードのうねうねとした節に乗った詞は、
まるでモリッシーが歌う"ギャングもの"をぐいっと拙くしたような内容。
聴いているうちに、ヘンな気分になってくる。
スペイン語さっぱりわからないけれど、韻を踏みながら繰り出される言葉は
あまりにも無体。


観ちゃったら、
安易に「人間の善悪とは…」みたいな"まとめ"に逃げさせてはくれない。
しんどかった。しかし、観る事ができて良かった。
知らないままより、知っていたほうがずっと良いや。



by snowy_goodthings | 2015-09-06 15:30 | 鑑賞記


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by Yukiko I. N.

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