Yet How Strange a Thing is The Beauty of Singing Voice.

途中、何回かの兆候を経て最後の締め括り、
アンコールで起きた事は一瞬だったけれど悲しかった。
しかし、あの瞬間だけを取り上げて「台無し」だなんて言いたくない。
言ってほしくもない。
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Mr. Morrissey ご本人がどう感じて考えていたのかは解らないけれど、
いつもと違ってシャツを脱いで投げず、
舞台の正面・左右へゆっくりと深くお辞儀をしてから
去る姿は端正で美しかったです。まるでオペラ歌手みたいに。

私はそんな自分の印象のほうを大事にしておきたい。

自分が考えたって仕方無いのに気になっちゃって考え過ぎて、翌日、
日本に帰ってきてから具合が悪くなって寝込んだけれどさ。
なにもかも真に受け過ぎた。
そんな日曜の夜でした。


*


VIVID LIVE 2015 "An Evening with Morrissey"
第4夜の5月31日、最後の夜。
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人混みを避けようと思って日暮れ前に出たけれど、
ホテルを出ると、Circular Quay駅のほうからVIVID LIGHTを観に来た人々が
どっと溢れていて、なかなか先に進めない。
朝6時過ぎには10分足らずだったオペラハウスまでの道のりは、
夜6時過ぎには30分ちょっとかかった。
さすが日曜日。

開場時間前だったけれど、ロビーはオープンしていたので入ろうとしたら、
"バックパックはクロークに預けて"と止められた。
同じ容量の荷物でも、ショルダーバッグであればOKなんだけれど、
背負うカバンはダメらしい。
昨日と同じボディバッグで来れば良かった。これは失敗。
うさこ・カメラ・財布を出して、ほとんど空になったリュックとコートをクロークへ
お願いする。

うさこ、剥き出し。
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チケット1枚でウサギのヌイグルミ連れだけれど、
良いですよね?
うさこは私が4歳の時からの相棒なんだよ。ずっと一緒に旅している。

今夜の席はここ。
CIRCLEのいちばん前、PAのすぐ後ろ。
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ステージ全体が綺麗に見渡せる。
前のめりになって、手すりにしがみついて舞台を見下ろしたくなる。そんな場所。

コンサートが始まる前、
左隣のおじさまに"僕は横の空いた席に移るから、ここ使いなさい"と
うさこ、席を譲られる。
ええええ…!
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Circleは、年齢高めなオトナが多い印象。
ヌイグルミ連れの私は、実年齢よりもうんと若く見られていたかもしれない。
周りのお客さんから"可愛いね"と声を掛けられて、照れまくるのでありました。
私が今までに出会ったモリッシーファンは、
誰も彼もが不思議な寛容さを持ち合わせている。謎だ、謎。


*


20時前、たぶん昨夜よりもさらに早めだったかもしれない。
プレショーの映像が流れ始める。自分の目線のほぼ真正面に流れる映像に、
今夜もやっぱり期待と憂鬱とが綯い交ぜになってくる。
ただ、今夜は楽しみという気持ちのほうが強かったかも。昨夜が素敵だったから。

今夜も始まる。今夜が最後。
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歌い手としての絶頂とは、
このヒトの場合はいったいどのくらいの高みまで至るんだろう。
昨日「最高」と思ったばかりなのに、今日はもっと凄い。歌声が体の芯まで響いてくる。
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終わってから気付いたけれど、
この日のセットリストでThe Smiths時代の楽曲は先生不動の主張、
Meat Is Murderだけ。
SuedeheadからKiss Me A Lotまで、
ソロキャリアにおける最初のシングルから最新の配信曲まで。
それと、フランキー・ヴァリのカバーTo Give (The Reason I Live)。
うわぁーっと狂乱するというより、
じわっとじっくり音楽を聴き入るような雰囲気。
勿論、いつも通り、嬌声挙げているヒトもいたのだけれど。

スミスから逃げ回って大人になった聴き手である自分には、
怖くない心地良い構成。
勿論、モリッシー先生はバンドの中にいてもソロでいても、
難しいんだけれど。

とにかく、メディアがモリッシーについて語る時に
いまだ'ex-vocalista do the Smiths'という冠詞を付けることには違和感しかないから
(ありのまま彼の一部であり、すばらしいキャリアであるのはわかっている)
これらが今夜モリッシーが"自分が歌いたい歌"であるなら、喜んで聴く。
自分の思い出と思い入れをひっ重ねて、あの歌を歌ってほしいとか、
この歌を聴きたいとか、言わない。というか、言えないし。
なにより、自分が何を求めているか、自分でもわからないから。
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今夜もヘンなSpeedway。
昨夜よりも、"Yo nunca dije, Yo nunca dije"が綺麗な節回しになっている気がする。
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拝聴2回目にして、正調Speedwayを忘れそうです。恐るべし。


自分の希望は無い…なんて書きつつ、グラスゴーで聴いて痺れた
One Of Our Ownをまた聴くことができたのは嬉しかった。←あぁ、書いちゃったよ
ぜんぜん自分が共感するような接点がない世界の歌なんだけれど、大好き。

この辺りで、完全に魂を持っていかれたっぽい。
またしてもぼーっとなっちゃって、時間経過を忘れてしまう。
何曲くらい聴いていたのかわからなくなっていた。
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だから、
World Peace Is None Of Your Businessがアンコール前最後の曲だとは思わず。

いつもならアウトロをバンドに任せて先生はすっと舞台袖へ去って行くのに、この日は
曲が終わるまでずっといて、マシュー・ウォーカーがドラムセットから降りて
先生のマイクスタンドの脇を通り抜けようとする寸前にふっと下がっていって、
笑顔でひと言。

"Goodbye"

そんな虚をつかれる終わり方。



そして、アンコール。
バンドと一緒のご挨拶はいつも通りだったんだ。
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その後、
"Thank you for everything."に続けて
モリッシーはいつもより少し長い時間を使って何を話したかったんだろう。

"... And as I do, I say, Thank you for everything.
And if, if the earth as in the world..."で間を取った次の瞬間、
1階STALLS前方の観客が発した言葉をきっかけに
表情が変わってしまった。
誰が何を言ったのか、どうしてそうなったのか、自分の席からは判らない。
"What do you want? Tell me, and I'll give it you. What do you want?"と
詰め寄るかと思ったら、ぱっと背中を向けて
"Jesus... Anyway, forget it."と、
そのままNow My Heart Is Fullを歌い始めてしまった。

今夜、いちばん大きくて、いちばん綺麗な声で。
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そして、あの挨拶。

1 Suedehead
2 Staircase At The University
3 Ganglord
4 Speedway
5 Kick The Bride Down The Aisle
6 Istanbul
7 One Of Our Own
8 Yes, I Am Blind
9 I'm Throwing My Arms Around Paris
10 Kiss Me A Lot
11 To Give (The Reason I Live)
12 Mama Lay Softly On The Riverbed
13 Everyday Is Like Sunday
14 The Bullfighter Dies
15 Smiler With Knife
16 Earth Is The Loneliest Planet
17 The World Is Full Of Crashing Bores
18 I'm Not A Man
19 Meat Is Murder
20 World Peace Is None Of Your Business
enc. Now My Heart Is Full


*


"Forget it."って言っていたけれど、
あの時に何を話したかったのかいつか聞くことはできるのかな。
それとも、これっきりかな。わからない。


"What do you want?"って言っていたけれど、
もし私が答えちゃっていいなら、自分だってそんなに出来が良い聴衆ではないけれど、
 #なにより週1~2回限定菜食の、
 #肉も魚も菌も、野菜は根まで食べるノンベジタリアンだし
またMorrisseyが歌う場所にいたいです。居合わせる事を許してほしい。
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したっけ、1年後に読み返したら、自分で
自分の感覚の拙さが情けなくて身投げしそうな作文だな…これ。しないけど。
しかし、残しておきます。これが、あの時に自分が自力で見聞きできた事だから。
他人がどう見聞きしたとか、解釈したとかは知らない。知ったこっちゃない。
舞台の上にはモリッシー(とバンド)しかいないし、
それを観た自分の五感は自分ひとりのものでしかないから。

あの場にいたヒトの数だけ、
キラキラでドロドロな感動が生まれている筈だから。
それぞれが死ぬまで大事にするであろう、美しい物語でいいじゃない。


そして、
次にどのように自分が感じるか。そんな事はわからない。
幸運にもいつか「次」が来たら、その時のお楽しみです。


by snowy_goodthings | 2015-05-31 22:30 | 鑑賞記


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by Yukiko I. N.

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