Stage Becomes a Sailing Ship in Circulating Storm.

ただただ、楽しかった土曜の夜。
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VIVID LIVE 2015 "An Evening with Morrissey"
第3夜の5月30日。
第1夜と第2夜の様子は電子の噂に見聞きしたけれど、
自分の身体を以て鑑賞するのは今夜が最初。


19時30分、
オペラハウスの楽屋裏、グリーンルーム天井の電光掲示に"MORRISSEY"のサインが
光り「開演準備」を告げるアナウンスが流れてきたのを合図に、
黒装束のセキュリティやスタッフの方々がわらわらと移動していく。
開場時間だ。

存外美しくて美味しい(お世辞じゃなく本当に見事だった)、
モリッシーの希望によるモリッシーのためのベジタリアンミールと
イケてるオーストラリアのワインとアサヒスーパードライのラッパ呑みで
盛り上がっちゃって、Vivid Backstage Tourの締め括りディナーはぜんぜん時間通りに
終了する気配がなかったのだけれど、ガイドのおじさんが
"Yukikoはこれから今夜のMorrisseyのショーを観に行くから、先にお別れだよ"と
宣言して19時45分の終了時間ぴったりに連れ出してくれた。
途中退席は私ひとりだけ。あらら…

搬入スペースを通り抜けてStage Doorの外まで案内して頂いて、
どうしようもなく気の利かない拙い語彙ばっかりの英語でお礼を言って、
"Enjoy!"と見送りの言葉を貰ってコンサートホールへ。
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今夜の席はSTALLS、ステージ上手寄り(客席から向かって右側)。
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ヘンなの…1時間ちょっと前、あの幕の裏側下手の隅にいたんだ。そして今では
この幕はプレショー映像を流す"スクリーン"ではなく、歌舞伎の"浅葱幕"に見える。
この幕が振り落とされると、"World Of Morrissey"が現れる。
それって、まるっきり歌舞伎のお舞台の始まり。

…あれ?

それって、前にも聞いたことがある。
それって、モリッシー先生本人の口から。

3年前の川崎クラブチッタでの第一声、
"Kawasaki, KABUKI"。

それって、頭韻法の修辞的挨拶としか思っていなかった。


*


20時の開演時間より少し前にオープニング映像が流れ出した。
3月のグラスゴーで観た時にはVISAGEがお悔やみのように流れたけれど、今夜は無し。
Lou Reedの1974年のインタビューに大笑いしたり、New York Dollsで踊ったり、
1階席の私の周りはえらい陽気。

私自身は、ほん一瞬だけれど猛烈に憂鬱な気分になる。だって、
いよいよショーの始まりだから。始まったら終わってしまうからさ。でも始まる。

始まった。
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"There's a cyclone coming."

そのご発声の通り、
嵐のようにQueen Is Deadのイントロが頭の上から降り注いでくる。
  1973年のオペラハウス
  杮落としにはエリザベス二世が来賓している…

そして、Morrisseyの歌声。
深く柔らかいのに、突き刺さってくるようなあの声が飛んでくる。
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グラスゴーで聴いて驚いたあの声。ううん、今夜はもっと凄まじく力強い。
何が起きているんだろ。
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コンサートホールに音楽の暴風雨が来たというのなら、
客席では熱狂の大浪が起きている。舞台は音と光が渦巻く大嵐に揺さぶられる船みたい。
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自分にとって、モリッシー先生は彼我の遥か彼方の存在で、
遠くから存分に歌う姿を存分に眺められれば最高に嬉しいのだけれど、
今夜はずいぶん近い気がする。
もちろん、それは物理的な距離ではなくって…なんだろ?

ヘンなSpeedwayのせいだろうか。
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暗転の後、リードギターを除いて全員パートチェンジ。
スペイン語はさっぱり解りませんが、
グスタボが歌う"Yo nunca dije, Yo nunca dije"のリピートはすごく耳に触って残るし、
"true to you"が字余りに変わったのには「本当に?」とツッコミたくなる。
それって、strange wayだから。
よくできたミュージカルのようだ。なんだか楽しい。


それとも、その後のせいか。
ジェシィのギターにちょっとトラブルがあって
モリッシー先生がお喋りを引っ張ろうとした瞬間、2階席のほうから
誰かが叫んだ"Happy Birthday!"をきっかけにHappy Birthday To Youの大合唱が
始まった。1週間と1日遅れのモリッシー56歳のお誕生日お祝い。
それに対して、主役の"Too late!"の声が素晴らしく響くこと、響くこと。
よくできたコメディコントのシークェンスのようだ。なんだか楽しい。


Certain People I Knowの可愛らしく
(←エルダーのおじさまにこの表現は如何かと思うが)
軽やかなアウトロとか、エコーがぐわんぐわん耳鳴りしてくるMy Dearest Loveとか、
スネアドラムの音が腹に直撃してくるMama Lay Softly On The Riverbedとか、
聴こえてくる事、観えてくる物、なにもかもが鮮やかに感じられる。
さっきの憂鬱はなんだったんだ。心は浮き立ちまくる。


でも、極めつけはMeat Is Murder。この歌の印象は今夜がいちばん強烈でした。
浮き立った心は、ぐるんぐるんと振り回される。
間近でバックドロップの映像を観ていると、
自分の緩い価値観の多様性について理解を求める主張を、真っ向から責められている
気分になってくる自意識過剰。偶然なんだけれど、自分自身が最近
ハラールとかコーシャとか宗教的理由による食習慣について考える機会が多かったから、
それらを軒並み否定してくる映像群はひじょうに辛い。

でも、それがモリッシーだから。


最後のNow My Heart Is Fullはとても優しく聴こえたけれど、
決して甘やかしてはくれていないのかもしれない。
今この瞬間、
自分が考えたり感じたりしていることは、自分の責任においてなんとかします。

隙だらけで突っ立っていたら脾腹をしたたかに蹴られ、
倒れこむ寸前に手を掴まれて立たされて、
「さぁ行きなさい」と優しく背中を押される。喩えて言うなら、そんな気分。
このおじさんの姿を観て声を聴いて、何かを感じるだけ自分の頭や体が動くんなら、
自分の力で立って行けるだろ。行かないと。


アンコールは賑々しく華やかなFirst Of The Gang To Die。
栗原類くんみたいなルックスの男の子が、たたたーっと
ステージを駆け上がってモリッシーに到達、乙女のように抱きついていた。
ふわっと軽やかにやってのけたもんだから、思わず賞賛の拍手をしてしまう。
よくできた青春ドラマのようだ。
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音と光の大嵐の中で、溺れる。溺れる。溺れる。

自分の感受性はイカレてしまったらしい。
おかしい。何故、こんなに楽しいんだろう。MIMは辛かったけれど、
気持ちの乱高下が楽しくって仕方が無い。だから、平気。
ただただ楽しい。おかしい。


Mr. Morrissey ご本人はこの夜をどう感じているかは解らないけれど、
(モリッシーについての真実はモリッシーしか知らない)私は幸せでした。


1 The Queen Is Dead
2 World Peace Is None Of Your Business
3 Ganglord
4 Speedway
5 Kick The Bride Down The Aisle
6 Earth Is The Loneliest Planet
7 Stop Me If You've Heard This One Before
8 Certain People I Know
9 My Dearest Love
10 Staircase At The University
11 Kiss Me A Lot
12 I'm Throwing My Arms Around Paris
13 Istanbul
14 The World Is Full Of Crashing Bores
15 Mama Lay Softly On The Riverbed
16 Everyday Is Like Sunday
17 The Bullfighter Dies
18 People Are The Same Everywhere
19 Meat Is Murder
20 Now My Heart Is Full
enc. First Of The Gang To Die


*


コンサートが終わって、
ふと携帯電話を見たら、オットより「地震!」のメールが入っていて驚いた。
コンサートホールの客席ど真ん中で、日本に電話をかけて無事を確認するなんて
無作法を犯してしまったけれど、どうか許してください。

横浜は大きく揺れたようですが、大事無し。
地震とか火山噴火とか、天災の恐怖が身近にあるんだから、
人間同士は(ついでに動物とも植物とも)平和に生きたい。
そういう考え方って、甘いかな。
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かくして、土曜日はお仕舞い。

そして翌日、
日曜日はぜんぜん違う夜になるのですが、それについては改めて。





by snowy_goodthings | 2015-05-30 22:30 | 鑑賞記


日常瑣末事記録


by Yukiko I. N.

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