皇帝と公爵 / Linhas de Wellington

原題はポルトガル語、"ウェリントン線"。
ナポレオン・ボナパルド皇帝の戦争のひとつ、
フランス軍とイギリス・スペイン・ポルトガル連合軍とが戦ったイベリア半島戦争で、
イギリス軍のウェリントン初代公爵ことアーサー・ウェルズリー元帥がリスボンの周囲に
建造したトレス・ヴェドラス堡塁線のこと。
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(C)ALFAMA FILMS / FRANCE 3 CINEMA

世界史では「スペイン独立戦争」として習ったけれど、お隣のポルトガルだって焦土と化す
戦場だった。そうですよね、そうです。不勉強でした。

トレス線までフランス軍を引き込むべく行軍するイギリス・ポルトガル連合軍、
それに戦争と略奪で住む地や家族を奪われたポルトガル人・イギリス人達が難民となって
付いていく。策にはまるフランス軍。さらに、脱走兵達、反乱の郎党達。
フランス語とポルトガル語と英語、ちょっとだけスラヴ語圏の言葉が混ざって、
様々な国家・家族・個人の理想と欲望と思想と思惑が交錯する。

スペクタルはかなり控えめに描写された戦争の様相。
観ていて嫌な気分になるくらい、人間の生暖かく汚い有り様がヌラヌラと繰り広げられる。

151分の長尺ですが、あまり長いとは思いません。
痛々しく嫌な気分がしつつ、戦火を生き抜く人・死に絶える人の群像劇には感動。

だからこそ、
鑑賞者の解釈違いを招きそうな邦題とポスターレイアウトには綾を付けたくなる。
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邦題の「皇帝と公爵」って誰のこと?
…と、思うくらいナポレオン"皇帝"とウェリントン"公爵"の出番は極めて少ない。
核心じゃないからバラしてしまえば、ナポレオン皇帝は肖像画と台詞でしか出てこない。
この戦争の頃は侯爵だったウェリントン元帥は、指揮官だから前線にはほとんど出てこない。

ポスターには、ウェリントン元帥:ジョン・マルコヴィッチとマルボ男爵(皇帝じゃない):
マチュー・アマルリックがでんと載っているけれど、2人の出番は極めて少ない。
マチューの声はフランス軍の語り手として聴こえるけれど、姿はあんまり出てこない。
だってフランス軍を率いるのはマチュー、もとい、マルボ男爵ではなく、マッセナ元帥だ。

あー、もう。
「解釈と鑑賞」って、かつてあった国文学誌のタイトルを配給会社さまへ献じたい。


RTPポルトガル国営放送では、
'As Linhas de Torres Vedras'に改題して全3話170分再編集版が放映されたそう。
今なら、RTPホームページで全編動画視聴できます。


昔も今も、戦争や紛争によって起こるのは、↓こんな事態。そういう映画。
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by snowy_goodthings | 2014-01-05 19:00 | 鑑賞記


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by Yukiko I. N.

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