チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢 / Poulet aux Prunes

自伝コミックを映画化したアニメ「ペルセポリス」が強烈な印象だった
マルジャン・サトラピが今度はマチュー・アマルリックを主演に実写映画を作った
というので、日本で公開されるのを楽しみにしていたもの。

1950年代のイランが舞台。監督にとって生前の時代である分+フランス製作映画である分、
望郷と想像が入り交じって幻想的で怪しげな風景・光景、愚かにも美しい人物達。
劇画調顔のマチュー・アマルリックが、すごい映像にハマっている。(^_^;
女優さん達も圧巻のど迫力で、名前を覚えられなくても顔はもう忘れられない。
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(C)Celluloid Dreams Productions - TheManipulators - uFilm Studio 37 - Le Pacte- Arte France Cinema - ZDF/ Arte - Lorette Productions- Film(s)


お話はいたって単純。
大切なヴァイオリンが壊され、同じ"自分の音"を出せる楽器が見つからない
ナセル・アリは人生に絶望し、芸術家らしく死ぬことにする。そして8日後に亡くなる。
…それだけ。

毒っ気が強いユーモアが多くて、悲劇なのに愉快。
ただ、死ぬまでの8日間の最後のほう、
彼の楽器が壊された経緯、そして彼が"自分の音"を出せなくなった本当の理由が判る
くだりはただただ、さめざめ寂しい。
期待通りに綺麗な映像を通して、想像しなかったほど切なく儚い人生を見せられて
しまった。人生は短く、そして厳しい。


物語の舞台はイランだけれど、
フランス・ポルトガル・イタリアそしてイランの役者達がフランス語で演じたことに
ついて、"映画表現の自由さ"だけではない、何か意味を深読みしたくなってしまう。
(^_^;
主人公ナセル・アリは、サトラピ監督の母方の叔父さんがモデルらしいけれど、
主人公の弟が共産主義活動家であるのは監督の前作「ペルセポリス」で獄死した
父方の伯父さんを思い出させる。そしてナセル・アリの叶わぬ恋の相手の名前は、
監督の故郷"イラン"のアナグラムだろうから、かの国の歴史や現情勢のややこしさを
考えずにはいられなくなる。

大人向け絵本のような映画なので、観る側の感受性しだいで如何様にも読み解けそう。



ところで、自分がこの作品を観た横浜の映画館での観客は、
たったの3人(うち2人は私と配偶者)…んなバカな。
かつて「フランス映画祭」が開催された街として、この動員の少なさはあんまりだ。

私的には、
今年これまで観た映画の中では、かなり映画らしい感動があった作品。
by snowy_goodthings | 2012-11-15 23:10 | 鑑賞記


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by Yukiko I. N.

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