シングルマン / A SINGLE MAN

米ソ間の冷戦の真っ只中。
世界中が「核戦争の危機」という"死"を身近に感じたキューバ危機から約1ヶ月後、
1962年11月30日の1日を生き抜いた、1人の男性のお話。
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(C)Fade to Black Productions, Inc.

主人公が住む木とレンガとガラスの使い方が素敵なモダンな邸宅とベンツ220Sクーペとか、
オルダス・ハクスリーとかエルビス・プレスリーとか、
お隣の女の子が気に入っている映画がチャールトン・ヘストンの「ベン・ハー」だったりするとか、
大学の学生がメスカリンを飲んでいるとか、
役者を夢みる通りすがり君の髪型・服装はジェームス・ディーンの真似であるとか、
死んじゃった彼が読む小説が映画化されたばかりの「ティファニーで朝食を」だったり、
1960年代はじめのアメリカってこうだったんだろうなーっと思われる事物が沢山。


このお話と同時代、1961年生まれのトム・フォードが初めて作った映画。

それまで彼がクリエイティブディレクターを勤めてきた、
グッチ、イヴ・サンローラン、そして現在の彼自身のブランドについては
他の映画作品で衣装として登場する程度にしか知らないのだけれど、
この映画では彼の美意識が惜しみなく存分に炸裂しているんだと思う。たぶん。

1人の男性のお話なんだけれど、
彼らを巡る人々が、大人も子供も、男性も女性も、深い思考は無いけれど
鋭い感覚に富んでいる。彼らとの会話が音楽のように心地良い和音を奏でて、とても深い。
印象的だったのは、このテの映画って、女性は"通過ポイント"扱いになることが多いけど、
この作品ではちょっと違う。これは素敵。

論理的にたくさん喋るのは主人公だけなんだけれど、ひたひたと変わる画面の色彩・陰影で、
周囲の人々の心情は台詞以上に雄弁に伝わってくる。

滑稽に悲劇的なお話だが、リアルな宗教説話のような。
不思議な感触。

このヒトのお洋服は手が届きませんが、映画はまた観たい。
by snowy_goodthings | 2010-10-11 21:30 | 鑑賞記


日常瑣末事記録


by Yukiko I. N.

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